食材と体調

病院では正常なのにだるい?薬膳で整える「隠れ貧血」対策

kensa-yakuzen

「健康診断は異常なし。でも、なんとなく疲れが抜けない」
「寝てもだるい」「めまいがする」「生理後はぐったり…」

日々そんな悩みを抱えていませんか?
そんな女性は、もしかすると**“隠れ貧血”**かもしれません。

この記事では、臨床検査技師の経験から病院では問題と言われても改善しない不調に対して、薬膳マイスターの視点から、薬膳の両面で“ゆるく整える方法”を紹介します。

貧血とは?数字だけでは見えない「エネルギー不足」

貧血の定義

目安(成人):女性 12.0 g/dL未満、男性 13.0 g/dL未満(各施設の基準差あり)。

『貧血とは、赤血球の数が少ないか、ヘモグロビンの濃度が低い状態のことです。』
出典:貧血の概要

貧血による体の不調

貧血は「血が足りない」だけの問題ではありません。
血液の役割は、酸素の運搬・熱の維持・栄養の輸送・老廃物の回収など多岐にわたるため、足りなくなると全身にさまざまな症状が現れます。

不調生理学的理由(西洋医学)薬膳(東洋医学)の捉え方
だるさ・疲れ酸素不足気血不足
めまい脳の酸素不足血虚
冷え末梢循環の低下血虚+陽気不足
肌・髪トラブル栄養配分が後回し血が肌髪を養う不足
生理の乱れホルモン・血の量の影響肝血不足
集中力低下脳の代謝低下気血不足
免疫低下白血球機能影響脾虚・衛気不足
むくみ循環不良湿(余分な水分)

数値が軽度の異常でも生活の質(QOL)を大きく落とすのが“貧血の怖さ”です。

なぜ数値が正常でも「貧血みたい」に感じるの?

病院で血液検査しても、異常はないと言われたことありませんか?
検査技師として多くの方の血液データを見てきましたが、
女性で「隠れ貧血」と呼ばれる状態には、以下の3つの特徴があります。

① 鉄の“貯金”が少ない(フェリチン不足)

血液中の鉄量(ヘモグロビン)は十分でも、体に蓄えられた鉄(フェリチン)が不足していると、
ちょっとしたストレスや生理で酸素供給が追いつかなくなります。
→ 結果として「酸素不足→だるさ・立ちくらみ・冷え・抜け毛」などが起こります。

参照:鉄分不足?「フェリチン」とは

フェリチンは血液検査で体の状況を把握することはできます。しかし、健康診断などの一般の検査では測定しません。
検査を希望する場合、内科などでフェリチン検査を希望すれば実施は可能です。貧血症状があれば、保険適用で1,500〜3,000円前後で受診することができます。

② 胃腸の働きが弱く、吸収できていない

薬膳では「脾(=消化吸収の働き)」が弱ると、
血を作る材料が十分に吸収されず“血虚(けっきょ)”という状態になります。
結果として、「冷えやすく、むくみ・倦怠感を感じやすい」のが特徴で、胃腸の働きを整える「健脾」ケアが鍵となります。

参照:脾気虚とは何か?その原因と症状

病院で胃カメラ・血液検査をして“異常なし”と言われても、胃腸の“栄養を吸収して体に巡らせる”力=東洋医学でいう『脾(ひ)』が弱っていると、『なんとなくだるい』『冷え・むくみ』といった不調が出やすくなります。

西洋医学の検査値で“明らかな異常”が出ない場合でも、鉄・タンパク・ビタミン・ミネラルなど栄養関連の低めの数値+胃腸の働きに関する自覚(胃もたれ・食後の眠気・便の状態)から、『脾虚』傾向を読み取るヒントになります。

③ 血の巡りが悪く、顔色がくすむ

「肝」は血液を貯蔵し、全身の巡りをコントロールする臓器で、
その肝の血が足りなくなると、血を全身に送り出す力が弱くなり、巡りが滞ります。
→ 結果として、「冷え・肩こり・生理痛」などを伴うのが特徴です。

参照:血が足りないと精神を病む?

肝の血が足りない(肝血虚)」という状態は、病院の血液検査では“異常なし”と出ることも少なくありません。
ただ、ヘモグロビン・フェリチン・タンパク質・ビタミンなどの数値が下限ギリギリだったり、疲労や冷え、肩こり、生理痛といった“体のサイン”が出ている場合は、すでに血の巡りが滞っているサインかもしれません。
東洋医学では、こうした「数値の範囲内の不調=未病」として、食事や薬膳で整えることを大切にしています。

薬膳で整える「隠れ貧血」ケアの基本

薬膳では「血を補う(補血)」+「巡らせる(活血)」の両方が大切です。
以下の食材を日常に取り入れていくことで少しずつ改善効果が見込めます。

食材効能補足情報
なつめ補血・安神(ストレス緩和)鉄・葉酸が豊富。中国では“女性の朝食”と呼ばれる。
黒きくらげ活血・潤腸食物繊維と鉄分が多く、血の巡りを整える。
ほうれん草補血・養肝鉄+ビタミンCの組み合わせで吸収UP。
鶏レバー補血・益気貧血改善に最も効果的な食材の一つ。週1回程度が目安。
黒ごま補血・潤燥肌や髪の乾燥も整える“女性の味方”。

ポイント:
「血をつくる食材+巡らせる食材」を1食に組み合わせるのがコツです。
(例)黒きくらげ入り鶏レバースープ、なつめ+黒ごま粥など。

薬膳は体の不調を治すわけではありませんが、不調になりにくい土台を作るために重要です。「巡らせて整える」感覚。
自分も病院でわからない体の不調に長年悩んでいました。薬膳を取り入れ始めて、少しずつ体の状況が変わっていくことで、データを追う職業だからこそ、体の“流れ”の大切さをより一層実感しました。

女性の貧血改善レシピ

🥬 ほうれん草と黒きくらげの炒め物

【材料】(2人分)

所要時間:約20分(実働は約10分)

  • ほうれん草 … 1束(約200g)
  • 乾燥黒きくらげ … 5〜6g
    (水で戻すと約30g)
  • にんにく … 1片(みじん切り)
  • ごま油 … 大さじ1
  • 醤油 … 小さじ2
  • オイスターソース … 小さじ1
  • 酒 … 大さじ1
  • 塩・こしょう … 少々
  • 白いりごま(仕上げ用) … 適量

【下ごしらえ】

  1. 黒きくらげを戻す
     乾燥黒きくらげを水につけ、約15〜20分戻してから食べやすい大きさに切る。
  2. ほうれん草を切る
     ほうれん草はよく洗い、4〜5cmの長さに切る。

【作り方】

  1. フライパンにごま油を熱し、にんにくを入れて香りが立つまで弱火で炒める。
  2. 黒きくらげを加え、中火で1〜2分ほど炒める。
  3. ほうれん草を加え、全体がしんなりするまでさっと炒める。
  4. 酒を回し入れ、醤油・オイスターソースを加えて味を調える。
  5. 塩・こしょうで味をととのえ、仕上げに白ごまを振る。

🍵 なつめ茶(なつめを煮出したお茶)

【材料】(マグカップ約2~3杯分)

所要時間:約20分

  • 乾燥なつめ(大棗)… 5~6粒
    (輪切りや刻まれているものでもOK)
  • 水 … 500ml
  • はちみつ(お好みで)… 小さじ1~2

【作り方】

  1. なつめを軽く洗う
     乾燥なつめをさっと水洗いして、表面のホコリを落とす。
  2. 水から煮出す
     小鍋に水となつめを入れ、中火で沸騰させる。
  3. 弱火でじっくり煮る
     沸騰したら弱火にし、フタをして 15〜20分 煮出す。
     なつめの色や成分がゆっくりとお湯に移ります。
  4. カップに注ぐ
     温かいうちにカップへ。お好みで はちみつ を加えると飲みやすくなります。

日常でできる“ゆるケア”3選

1 深呼吸+軽いストレッチで巡りを促す
 呼吸は血流のポンプです。特に肩回し・腹式呼吸が◎。日々の軽い運動が気の巡りを整えます。

2 朝一の白湯で「脾(胃腸)」を守る
 朝は胃腸が冷えていることが多いので、白湯を飲んで起こしてあげましょう。最低でも常温水以上が基本です。

3 生理後1週間は“血を増やす”ことを意識する
 女性は毎月月経で血液を失います。なるべく血液を作り出す食材:レバー・黒豆・なつめ等を中心に摂るように心がけましょう。

まとめ:数字より“体のサイン”を見よう

観点現代医学薬膳
見るポイントヘモグロビン・フェリチン気・血・脾・肝のバランス
改善方法食事+サプリ補血+活血+安神
ゴール数値安定体が軽く・温かく・笑顔になること

「データで安心しても、体がしんどいならSOSサイン」
そんなときこそ、薬膳のやさしい整え方を取り入れてみてください🌿


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